4.そして70周年へ


2015年から2018年にかけて、楽友会設立から数え70周年にあたる記念演奏会を開催することが決まり、楽友会現役と楽友三田会で検討をスタートしました。そして2020年1月に、2022年2月の記念演奏会開催を決定しましたが、その矢先に発生したコロナ禍のため、その後この計画は余儀なく変更をせまられることとなりました。

 

大学合唱界にとっても、2020年は未曾有の苦難の年でした。2月末には活動自粛となり、学内施設の閉鎖、練習停止、六連定期演奏会、合宿も相次いで中止されました。集まって練習することができない状況が続く中でも可能なかぎりの手を打ってオンライン練習やリモート合唱を行い、そのノウハウが蓄積されていきました。大学からの許可を得て、8月から厳重な感染対策の下、全体を3グループに分けて各グループ週1回の対面練習を開始、10月からは全体の練習を再開しました。そして、12月の定期演奏会では、団員はマスクを付けて歌い、「有観客」で開催できることとなりました。

翌2021年、再びコロナ禍が拡大し1月から3月、4月下旬から6月下旬は練習中止となり、この年も苦難の連続となりました。しかし、サマーコンサートをなんとしても開催できるように、オンライン練習を引き続き実施。その後短い対面練習期間を経て2年ぶりにサマーコンサートを再開することができました。この年の後半は、感染対策を取りながらもコロナ禍前にかなり近い形で練習ができるようになり、年末の定期演奏会ではマスクなしで歌うことができました。その第70回定期演奏会では、25年ぶりにモーツァルト「レクイエム」をオーケストラ付きで演奏し、楽友会だけでなくOBOGにも大きな感激を与えてくれました。

 

その翌年の2022年、世の中では「3年ぶりの再開」が相次ぎ、楽友会でも六連定期演奏会、谺コンサート、夏合宿が再開しました。

しかし、12月の定期演奏会を無事終えた直後、楽友会は前例のない危機を迎えることになります。その年の団員の集まりにおける20歳未満の飲酒行為が発覚し、大学から無期限の活動停止処分を受けることになったのです。活動停止は、2023年2月から9月までの約7か月間に及びましたが、その間団員は真摯に反省した上で数回にわたって話し合い、真因分析と再発防止策を盛り込んだ再建計画を立てて、大学から活動再開の許可を受けることができました。2023年度前半は新入団員の募集活動ができなかったため、団員数の大幅減少という後遺症を残しながらも、10月から活動を再開し、12月の定期演奏会を無事開催することができました。こうして、コロナ禍と活動停止処分という2つの危機を乗り越え、定期演奏会だけは一度も中止せずに続けています。

 

2022年は「慶應義塾楽友会」が設立されてから70周年を迎えた年にあたります。記念演奏会は三度にわたる延期を経て、2025年2月に開催することになりました。本日の演奏会は3年延期とはなったものの、この年の70周年を祝うものです。各時代で演奏した代表的な合唱曲と現在の楽友会の演奏曲、そしてすべての時代で一貫して演奏してきたモーツァルトの「レクイエム」を通して、70年のあゆみを感じていただければと思います。